やり手社長の苦手なもの – 「年商1億の壁(2つ目)」の正体

「通販事業で年商1億、目指してるんだけど、
 どうしても4,000万ちょいで売上高の伸びが止まるんだよね…」

少し前、こう話してくれたのは
通販事業を立ち上げて9年ほどの一般消費者向け商品を扱うあるメーカーの経営者さん。

聞けば、当初は社内の反対を押し切って通販ビジネスに乗り出し、今では文句を言われない程度に売上高を高めてきた。ただ、会社経営全体に好影響を与えるほどではない…と四苦八苦している様子でした。

実は、年商1億を目指している中小企業の経営者さんで「4,000〜5,000万円で売上高の伸びが止まる」ことはよくあります。『年商1億の壁』なんて言われますが、この壁の中の1つにこの方さんも阻まれているんじゃないかな、と感じました。

さて、この社長さんが阻まれている『年商1億の壁』とは、どのようなものだと思いますか?

ちなみにこの『年商1億の壁』は、
私が感じるところでは2つ目の壁です。企業経営につきものの1つ目の壁はコチラ。さらに私たちの手元に入ってくる利益・会社の資本力を奪ってしまう3つ目の壁はコチラ

目に見えない2つ目の壁の正体

通販事業を立ち上げたその社長さんは、有名ショッピングモールに次々出店。楽天・yahoo・Amazonなど売上高をつくりやすいモールで販売力を伸ばしてきました。長年の努力の甲斐もあり、今ではカテゴリーでトップクラスのポジションを占めるまでに成長してきました。

ただ、年商が伸びない…。

「えっ、カテゴリートップの売上ってこんなもんなの?」と疑問に思うほど…
「マーケティングの方法が悪いのか?」「広告費が足りないのか?」「価格が適正じゃないから?」「それとも社員がサボってるのか?」いろいろ考えましたが、理由がわかりません…。

でも、年商が伸びないのにはシンプルなワケがありました。
結論から言うと…

「2回目・3回目の買い物をしてもらう仕掛けがないから」

この社長さんが幸運だったのは、ショッピングモールに出店していたことです。モールなので、経営者向けのデータは全てモール側が収集してくれています。これで問題の原因がより明確になりました(売上の分析データをとってる社長さんは全体の1%以下…)。

モールのデータ分析から何が見えたかというと…

  • 過去2年間の買い物客のうち7割超「1回しか購入していないお客様」でした。
  • 売上額に注目すると「3回以上買っているお客様」によって全体の7割弱の売上が作られていました。

すごくわかりやすい!もう、ここが原因ですよね…
3回以上買ってもらえれば、手堅く自社でお金を使ってもらえるお客様になるのですが、1回買ってくれたお客様にほとんどフォローしていなかったので、それをみすみす取り逃がしてしまっていたのです。

よかった!
広告費・販売費が足りないわけでも、取引価格の間違いでも、社員がサボっているわけでもありませんでした。これ以上お金をかける必要もなければ、取引価格見直しの手間も不要。社員を叱る必要もありません(従業員を叱るのって想像以上のエネルギーがいりますもんね…)。

一方…
年商1億超を達成している経営者の人たちは、この辺の顧客フォローをきちんと行います。そして、なんなく年商1億の壁を超え、2億・3億くらいまで一気に年商規模を伸ばしていきます。

つまり、
「新規客」を「自社できちんとお金を使ってくれるお客様」に転換する仕掛け、があるかないかで年商1億を超えるか、超えられないかが分かれるのです。

その仕掛けの中身として「2回目・3回目の買い物をしてもらう」ことが何よりも重要なファクターになっています。

1回デートしただけで彼氏ヅラする男…どう思う?

恋愛に例えるとわかりやすいですよね。1回デートしてそのあと女性に何もフォローしないのに彼氏ヅラする男…、端的にイタいやつです。そりゃあ、他に流れるに決まっています…。

女性でも男性でも、2回・3回デートして初めて 「まぁこれから先も付き合っていいのかな…」とお互いわかるのがフツーですよね。

しかし、ビジネスの話になると「1回買ってくれたんだから、この後も買ってくれるはず…」と思って顧客を放っておく社長さんが、ありとあらゆる業種にいらっしゃいます。これじゃあ顧客満足度も高まらないし、2回目・3回目の購入にもつながるはずないですよね…orz

あなたも聞いたことがあるかもしれません。
居酒屋に1回来店して、2回目に来店する確率は3割ほどに落ち込みます(そう、7割強が来なくなります。あれ…どこかで聞いたことある 笑)。3回目に来店する確率は1回目と比較すると2割ほどに落ち込みます。…で、3回来店してもらったら「ちょいちょい来てくれるお客様=ようやく自社でお金を使ってくれる顧客」になります。

美容院も同じです。1回目から2回目への再来店率は超優良店でも半分程度。フツーは3割ほどに落ち込みます。整体院も同じ。1回目の通院から2回目への通院は、超優良院で半分程度。3回目の来店は高くとも3割程度です。

飲食店なら「食べログ」
美容院なら「ホットペッパービューティー」
整体院なら「エキテン」
通販・小売業なら「Amazon・楽天・yahoo」

集客してくれる媒体がある業界の社長さんほど、このワナに陥ります

【注意】この壁は頭でわかっていても超えられない…

理屈はわかった。
…というか、こんなの聞いたことあるし…。

そう感じる経営者もいらっしゃるでしょう。その通り、この壁は経営者なら既にどこかで聞いたことがあるし、なんとなく感じていることだったりします。

でも超えられないワケがあります。
…なぜか?

この部分の改善がスゴ〜く地味だから

そう、この顧客フォローによる改善という方法は、凄く地味で、効果も見えにくいです。
そもそも「1回目の来店客」が「2回目の来店」にどれだけ転換するか計測している会社なんてほとんどありません。こういった顧客管理の面から見ても、成果が目に見えずらく「これやる意味あるの?」と、すぐにやめてしまいます。

だからこの仕事だけはやらない…。

もっと派手な売上アップの方法だったり…、
もっと劇的な成約率を高める方法だったり…、
もっと新しいマーケティングの方法
キラキラした新規事業に目を奪われます。

大好きですよね。新しいモノ。すごくわかります。
(ちなみにこれを私は自戒の念を込めて「宝探しと呼んでいます。)

案の定、この会社の取締役の方は、webマーケティングの専門家のコンサルティングを受け、新しいショッポングモールへの出店話を2つ、3つ持ってきていました。やはり勢いのあるモールの方が魅力的に見えてしまいますよね…。

ただ、よ〜く考えてみてください。
「2回目・3回目の買い物をしてもらう仕掛け」…

  • これには広告費がかかりません。
  • ここには価格競争もありません。
  • 出店コストや決済手数料もかかりません。
  • 一度取引している既存客向けなので、成約率も高いです。
  • ヨソと比べられないので差別化要素も必要ありません

ただ、2回目・3回目の買い物をしてもらえるよう新しく提案するだけ
「どんな提案がいいだろう?」と、考えるだけです。
成功する経営者はこのポイントを押さえて頭をひねっています。
ここを押さえることで顧客1人あたりの売上高と利益率を跳ね上げているのです。

対して…
7割強の新規客が抜け落ちていく状態で、新しい広告、新規事業、新しいマーケティングの方法を試しても一般管理費ばかりがかさむばかり。「自社でお金を使ってくれないお客様」を増やしてしまうだけではないでしょうか…?

本当に今やろうとしているソレは、
「今」やるべきことでしょうか…?

もしあなたが少しでも身に覚えがあるなら…
大損している可能性がとっても高いです。

どう少なく見積もっても年商でいうと百万円単位で損をしています。
常連客になった後の買い物を考えると数千万円は損しているかもしれません。

むしろ、新しいものに目を奪われて、かさんでいく一般管理費をそのままにしていたら、赤字経営にまっしぐらです。

それでも「宝探し」を続けますか?

さて、冒頭の社長さんにこの話をしたら、なんとか納得してもらえました。
ただ、今度は派手なこと・新しいこと好きの取締役を説得しなくちゃいけないらしく、頭を抱えていました…。会社が大きくなるほど、こういう謎のブレーキがかかってしまうんですよね…。

売上が大きくなるほど、今回の事例のように「何をやるか」より「何をやらないか」の選択の方が重要になってきます。

顧客管理がずさんなまま新規事業に手を出してしまうと、組織はグチャグチャになり、従業員を振り回したあげく、さらに既存事業の収益まで落としてしまう…なんて事態がカンタンに起こります。

私たち中小企業は、経営者の判断が従業員の人生を大きく左右します。一度来てくれたお客様に喜ばれる商品・サービスをご提案し、顧客満足度を高めて、売上高も利益率も高めていく。こんなシンプル経営で、経営者も、従業員も、お客様もwin-win-winな環境で年商1億を達成していきたいものですね。

考える価値のあることだと思うので、
ぜひあなたもこの機会に考えてみてください!
心からオススメします。

追記・・・

情報系・専門技術系・サービス業 を営む社長向けに、年商1億につながりやすくなる売上拡大施策をまとめました。情報系・専門技術系・サービス業 の方はぜひチェックしてみてください。

(有料note)